3 遺言書って必要?
遺言書って書いておいたほうがいいんですか?
いろんな方から聞かれます。
では、遺言書が必要でないと思われる方々は・・・
@我が家はみんな仲が良いから
そうですよね。でも、自分が亡くなった後も今までのように仲の良い家族が維持できるのでしょうか?
「自分が存在しない家族」を想像してみてください。
A遺言を残すほどの財産はない
いえいえ。自分では大した財産でないと思っていても、実際1千万円以下の財産で家庭裁判所で調停になったケースは全体の30%、5千万円以下では75%を超えています。
B遺言なんて縁起が悪い
遺言書を作成したことで病気になって死が近づいたなんて聞いたことがありません。逆に家族のことをよく考えるようになったり、財産を整理したり人生を振り返ったりと達成感が得られたとよくお聞きします。
C遺言を遺したら今の財産が使えなくなる?
遺言書を作成した後であっても不動産を売ったり預貯金を使ったりは自由にできます。
D遺言を遺したら子供に冷たくされる
仮にその様にお感じになられたら、いつでも遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができます。
このような理由で遺言なんて書かなくていい、あとでいいという方がほとんどです。
でも、果たしてそれでいいんでしょうか?
ご自分の財産をどのように遺された者に相続させたいのか、最終的な意思を伝えることは大変重要なことだと思います。
特に次のような方々にはぜひ遺言書を書いていただきたいと思います。
@お子様がいない夫婦
配偶者に全財産を相続させたい場合はその旨を遺言しておけば親には遺留分(法律で守られた本来もらえるはずの相続財産)相当分しか主張できず、兄弟姉妹は遺留分さえ主張できない。
A再婚し、先妻の子と後妻がいる
相続に関する争いが起こる可能性が高いので、慎重に遺留分にも配慮しながら作成する。
B相続関係が複雑
再婚等で、現在の妻にも先妻にも子供がいるような場合、子供に法定相続分とは異なる相続をさせたい場合は、相続分や財産の分割方法等を指定しておく。
C相続人がいない
相続人がいないとその財産は国庫になってしまいます。特定の人や団体に遺贈するとか、寄付をする等財産の処分方法を遺言しておく。
D内縁の妻に財産を譲りたい
法律上の婚姻関係にない相手方には相続権はありません。遺言を書くことが必要になります。
E相続権のない人に財産を譲りたい
特に世話になった、子供の配偶者やお友達に財産を譲りたい、相続人でない孫に譲りたいとき等も遺言で譲ることができます。
F事業を引き継がせたい子供がいる場合
後継者の指定とともに、土地や店舗、工場、株式等を相続できるようにしておく。
G家族の一員であるワンちゃんやねこちゃんはどうなってしまうんだろう。
遺言書でどうしてほしいか伝えるようにしておきましょう。
その他にも最近ではLGBTQ等の方々や、いわゆる「おひとりさま」の方、事実婚の方やひとり親家庭の方等いろいろなケースがありますが、遺言書を作成するには自分の意思能力が無ければ作ることができません。重い病気にかかってしまったり認知症になってしまっては作ることができなくなってしまいます。
そもそも遺言書を作成するということは、「遺すこと」だけではなく、「内容を確実に実現すること」が目的なのです。
是非、この機会に一度、検討してみてはいかがでしょうか?
2021年7月3日 朝日新聞より
遺産トラブル 高齢化で増加 20年前の1.5倍
相続をめぐるトラブルが後を絶たない。
遺産を分け合うための話し合いがまとまらず裁判所に申し立てられた件数はここ20年で1.5倍に増えている。
司法統計によると、遺産分割をめぐる家庭裁判所への調停や審判の申立ては、2019年に1万5842件。
65歳以上の人口増に沿うように右肩上がりの傾向で、1999年の1万645件と比べ48.8%増となっている。
争われる遺産が1千万円以下のケースも3割ほどあり、高額な遺産ばかりが争いになるわけではない。
また、調停や審判の決着に長期間かかる場合もある。
19年の場合、半年超かかったケースが全体の3分の2で、そのうちの半数は1年超を要した。
親族らの争いを避けるため、20年7月に国が自筆の遺言書を預かる制度を始めたところ、21年5月までに2万件に迫る利用があった。
公正証書としての遺言より費用が安く手軽なため、今後も利用が見込まれる。
制度導入に当たって法務省が55歳以上に実施したアンケートでは、遺言書を作成したことがある人は6.8%にとどまっていた。
2023年1月23日 朝日新聞より
相続人なき遺産 647億円
増える「おひとり様」国庫へ10年で倍
遺産の相続人などがいないなどの理由で国庫に入る財産額が、2021年度は647億円と過去最高だったことが分かった。
身寄りのない「おひとり様」の増加や不動産価格の上昇も背景に、行き場のない財産は10年前の倍近くに増えた。
専門家は早めに遺言書を作るよう勧めている。